企業のプロモーションや採用活動、商品・サービスの紹介など、さまざまな場面で動画が活用されるようになりました。
一方で、YouTubeだけでなく、YouTube Shorts、Instagram Reels、TikTok、Webサイトなど、動画を発信する場所も増えています。
そこで注目したいのが、ひとつの映像素材を複数のコンテンツへ展開する「コンテンツリパーパス(Content Repurposing)」という考え方です。
コンテンツリパーパスとは、すでに制作したコンテンツを、別の形式や用途に合わせて再編集・再利用することを指します。
例えば、企業の担当者に30分のインタビューを行ったとします。
これまでは、その素材を編集して5分程度のインタビュー動画を制作し、WebサイトやYouTubeに掲載する、といった使い方が一般的でした。
しかし同じ撮影素材から、
など、用途に応じて複数のコンテンツを制作することもできます。
YouTube Shortsも現在では最長3分まで投稿できるため、短い「切り抜き」だけでなく、ひとつのテーマをある程度しっかり伝える動画にも利用できるようになっています。
ただし、横型で制作した映像を単純に縦型に切り抜けば、すぐにショート動画として利用できるわけではありません。
一般的なYouTube動画などで使われる16:9の横型映像と、ShortsやReelsなどでよく使われる9:16の縦型映像では、画面の使い方が大きく異なります。
例えば、2人が横に並んでいる対談映像をそのまま9:16にトリミングすると、どちらか一方が画面から外れてしまうことがあります。
商品を横に置いて撮影していた場合も、縦型にしたことで肝心の商品が見えなくなってしまうかもしれません。
テロップについても同様です。横型の画面いっぱいに配置したテロップは、縦型に切り抜いたときに途中で切れてしまう可能性があります。
そのため、複数のフォーマットへの展開を予定している場合は、撮影時から二次利用を意識しておくことが重要になります。
例えば4Kで少し広めに撮影しておけば、フルHDの縦型動画を制作する際にも、画質を保ちながら必要な部分を切り出しやすくなります。
被写体を極端に画面の端へ配置しない、必要に応じて引きの画角も撮影しておく、テロップを映像に焼き込まず編集時に追加する、といった工夫も有効です。
さらに、インタビューであれば「後からこの部分だけを切り出しても意味が通じるか」ということまで考えて質問を設計する方法もあります。
つまりコンテンツリパーパスは、完成した映像を後から使い回すだけではなく、撮影前から複数の用途を想定して映像を設計することがポイントになります。
こうした映像の再編集では、大量の撮影素材から必要なシーンを探す作業も発生します。
この部分では、AIを活用した編集機能も進化しています。
Adobe Premiereには「メディアインテリジェンス」と呼ばれる機能が搭載されており、映像の内容や文字起こしされた会話、撮影日時などのメタデータから、必要な素材を検索できます。
例えば大量の素材の中から、映像の内容をもとに目的のカットを探すことが可能です。
さらに2026年には、Premiere上でソーシャルメディア向けの単語単位のアニメーションキャプションを生成する機能も追加されています。
Premiere(Beta)では、タイムライン上で必要な場所を指定し、AIによって映像や効果音そのものを生成する「Generative Media Tool」も登場しました。
こうした機能が発展していけば、「素材を探す」「字幕を付ける」「不足している素材を補う」といった編集作業の一部は、これまで以上に効率化されていくと考えられます。
一方で、AIによって編集作業が効率化されても、長尺動画を機械的に分割すれば魅力的なショート動画になるわけではありません。
特に短尺動画では、
「最初の数秒で何を見せるのか」
「長尺動画では必要だった前置きをどこまで削るのか」
「どの部分を切り出せば、それだけで内容が伝わるのか」
「縦長の画面の中で何を見せるのか」
といった判断が重要になります。
同じ撮影素材を使用していても、5分のサービス紹介動画と30秒のショート動画では、構成やテンポ、テロップの情報量などは異なります。
単なる「切り抜き」ではなく、それぞれの媒体や視聴環境に合わせて再構成することが必要です。
動画を掲載する媒体が増えたことで、映像制作も「1本の動画を作って納品して終わり」という考え方から変化しつつあります。
1回の撮影で得た素材を、YouTube、Shorts、SNS、Webサイトなどでどのように活用していくのか。
そこまで含めて撮影前に設計することで、同じ素材からより多くのコンテンツを生み出すことができます。
AIによって編集や素材検索の効率化も進んでいる現在、これからの映像制作では「どんな映像を作るか」だけでなく、「撮影した素材をどのように展開していくか」まで考えることが、より重要になっていくのかもしれません。